
はじめての出会い ~ファイナルファンタジーXIV~
正式サービス開始から数年後。
私は、オンラインゲームファイナルファンタジーXIVを遊び始めていた。
高難易度コンテンツに挑戦し、それなりに場数も踏んできた。
その日、挑んでいたのは、新しく実装された高難度ボス討伐の攻略練習パーティ。
予め話し合って待ち合わせた固定メンバーではなく、1時間練習その場限りのいわゆる”野良”パーティ。
私は、そのパーティに、不慣れなヒーラーとして参加していた。
「思ったより厄介だな~」
敵の行動パターンが不規則で、ヘイト管理もシビア。
パーティメンバーの連携が乱れた一瞬、一気に味方たちの体力が削られていく。
私のヒールは全く追いつかず倒れ、悔しさに唇を噛んだ。
「……っ、立て直せないかも」
その時だった。
もう1人のヒーラーから発せられた光のエフェクトが戦闘メンバー全体を包み込み、崩れかけた体力が一気に持ち直した。
素早く回復とバリアを組み合わせるような動きに、私は一瞬目を見張った。
的確な判断と早い判断。
状況を一瞬で読み取ったその動きに、私はあわててヒールを合わせた。
二人のヒーラーによる連携が、パーティ全体の体力を戻し、戦闘自体を次第に安定させていく。
先ほどまでの混乱が嘘のように、隊列も、回復も、綺麗に噛み合っていた。
結果、程なくしてボスを攻略。
私は思わずもうひとりのヒーラーへとパーティチャットで感謝を述べた。
「ナイスカバー。おかげでクリアできたよ~」
「こちらこそ、ありがとう」
たったそれだけのやり取りだったが、妙に印象に残った。
言葉は少ないが、ヒーラーとして無駄がない。そして、何か“通じる”感覚があった。
それが、ねこちゃんだった。
私はフレンド申請を送った。すぐに承認された。
その夜、チャットではないねこちゃんから届いた個別のメッセージ。
「よければ、次も一緒にやりましょう」
画面越しのメッセージに、私は思わず微笑んだ。
名前も、顔も知らない。でも、この人とは、もう少し話してみたい。
そんな小さな気持ちが、芽生え始めた夜だった。