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うさねこストーリー

【番外編4】りきゃまい、って言うんだ ~間違いじゃなくて、魔法のことば~

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【番外編】りきゃまい、って言うんだ ~間違いじゃなくて、魔法のことば~

「りきゃまい、って言うんだ」

「よし、次はりきゃまいでバースト合わせるね!」
「うん、了解」

VC越しの声は明るくて、リズムもいい。
うさはテンションが高いときほど、口調はちょっとだけ早口になる。

“りきゃまい”。
うさから何度か聞き慣れた言葉だ。
そう、リキャスト「毎」。スキルの再使用可能タイミングで、毎回確実に使う、って意味。

(でも……“リキャごと”じゃないんだ……)

ねこは密かに、ずっとそう思っていた。
自分はそう読んできたし、そう言ってきた。

けれど、うさが「りきゃまい」って言うたびに、なんとなく訂正のタイミングを逃していた。

「次、りきゃまいで鼓舞お願い〜」
「りきゃまい、か。了解」
「ん? なんか今ちょっと笑った?」
「いや、なんでもない」

(言えない……今さら言えない……)

今さら「それ、“リキャごと”って読む人も多いよ」なんて指摘したら、なんだか空気が変わってしまいそうで。
むしろ、うさが言う「りきゃまい」が自然に聞こえるようになってきてる自分がいる。

その語感の柔らかさも、テンポのよさも。
きっと彼女にぴったりの言い回しだった。

ある日の極練習中、静かな場面で。

「次のフェーズ、りきゃまいでアドル入れてほしいな」
「……うん、りきゃまいね」
「……ふふっ」
「なに?」
「ほんとはね、どっちが正しいとかあるのかもだけど……」
「うん?」
「でも、わたし、りきゃまいって言いたいんだ。だって、かわいくない?」

その声がちょっと照れていて、けれど少しだけ意地っ張りにも聞こえて。

ねこは黙って笑った。

「うん。りきゃまい、って呼ぼう。ねこも」
「ほんと? じゃあ、共通言語ね!」

VCの向こうで、うさが嬉しそうに笑った気がした。

ほんの小さな言葉の違い。
でもそれもまた、ふたりが一緒に過ごした時間の中で、自然とできていく「ふたりだけの言葉」になっていく。

“言い間違い”だって、ふたりの距離を近づける魔法になる。
ねこはそう思いながら、次の戦闘の準備を進めた。

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